明治政府に反旗を翻した西郷隆盛による西南戦争。

当時の人々はどのように評価していたのでしょうか?

明治期の女学生が残した記録を手掛かりに考察してみました!

女性運動家・山川菊栄の母が残した、西南戦争時の記録

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西南戦争とは、明治初期に西郷隆盛が中心となり、九州地方の士族が起こした反乱です。

この西郷隆盛による反乱について、ある明治の女学生の証言が残されていました。

その女学生とは、水戸藩士で儒学者の娘として生まれた青山千世

後の女性運動家・山川菊栄の母となる人物です。

この女学生の証言を読むと、西郷隆盛の反乱が当時の東京の庶民にどのように受け取られていたかが、見えてきます。

意外?女学生に人気の西郷隆盛

当時東京女子師範学校の寄宿舎で生活していた青山千世は、同じ寄宿舎に住む女学生たちが西南戦争について語る様子をこのように残しています。

お茶の水の寄宿舎でも、西南戦争は興奮の渦をまき起し、毎朝の新聞は奪いあいで、

「西郷さんに勝ってもらわなければ」、「西郷さんが負けたらどうしよう」という声が高かったものです。

(朝日新書「大奥の女たちの明治維新」より)

もちろん明治政府よりの意見を持つ女学生もいたそうなのですが、圧倒的人気は西郷隆盛。

ところがこの西郷人気は、女学生だけにとどまらなかったようです。

東京の庶民も、西郷隆盛にはけ口を求める

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千世は同様に、東京の女性たちの会話も以下のように残しています。

なにがなんでも西郷さんが出なくてはだめだ、どうしても西郷さんに勝たせたい、という声ばかり。

(中略)

庶民の声をよく伝えるお湯屋などでは女でもよく

「こんなばかくせえ世の中がいつまでもつづいてたまるもんけえ、どうせ徳川さまがいまにまたお帰りになるにきまってらあな」

(朝日新書「大奥の女たちの明治維新」より)

これは女性たちの意見に過ぎませんが、当時の東京都民が政府に不満を抱えていて、それを打破することを西郷隆盛に期待していたことがうかがえます。

西郷どんの勝利は夢物語・・期待の裏に展望なし

このように東京の庶民に熱狂的な人気だった西郷隆盛。

ところが西南戦争の勝利によってどのような未来が訪れるのか?については、ほとんど議論がされなかったようです。

いったい西郷さんが勝ったら日本がどうなるのか、どんな政府ができて、どんな政治が行われるのか、誰もそんなことは考えていなかったらしい

(朝日新書「大奥の女たちの明治維新」より)

先述の女学生・青山千世はこのようにも語っていました。

西郷隆盛の人気はあくまでも現状への不満の裏返しにすぎず、西南戦争後に期待する政治の姿も見えていなかったのでしょう。