ユダヤ人と聞けば、悲しい迫害の歴史や優秀な科学者を思い浮かべます。

ところがそのルーツについては、詳しく知らない方も多いのでは?

ここではユダヤ人のルーツやその歴史、ユダヤ人が信じる宗教についてまとめてみました。

ユダヤの教典「タナフ」でひも解くユダヤ人の歴史

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民族の誕生

ユダヤ民族の始祖はアブラハムと呼ばれる一人の男性でした。

アブラハムは現在のイラク南部に生まれましたが、年老いたある日、神「イェホバ」の啓示をうけます。

「約束の地、カナン(イスラエルのこと)を目指しなさい。」

というのです。

アブラハムはその啓示を信じ、カナンの地に移住すると、やがて息子イサクが生まれます。

すると再び、イェホバの神から啓示が降りました。

「息子を神に捧げなさい。」

そこでアブラハムは、神の命令に従い息子を手にかけようとしました。

しかしその様子を見ていたイェホバの神は、アブラハムの信仰心を知り、イサクの命を守ります。

そして、アブラハムに、カナンの地を与え子孫を繁栄させるという約束をしました。

神によって与えられたこの約束を、アブラハムは息子イサクに引き継ぎます。

こうしてイサクはイスラエルの長となりました。

(一方、アブラハムにはもう一人別の女性との間にもうけた男の子がいました。

この男の子イシマエルは、アラブ民族の始祖となっていきます。)

また、イサクにはヤコブという息子が生まれました。

ヤコブは再び神からの啓示を受け、「イスラエル」と名付けられます。

よって、彼ら民族はイスラエル民族※と呼ばれるようになるのです。

(※歴史のある時点でユダヤ民族と呼ぶようになります。

それについては以下の説明で言及します。)

そしてヤコブはたくさんの子供をつくり、その子供たちがイスラエル十二部族の族長になっていきました。

エジプトへの移住と困難の日々。そしてエクソドス(大脱出)

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そんなヤコブの時代、イスラエルの土地で大飢饉が起こり彼らはエジプトへ移住することになります。

はじめは歓迎されたイスラエル民族ですが、次第に疎まれ奴隷として扱われるようになりました。

イスラエル人たちが苦しみを神に訴えていたある時、祭司の職を司っていたイスラエル レビ族のモーセが、神からの啓示を受けます。

神は

「エジプトからの脱出を助けよう」

と言いました。

モーセは神の助けをかりてエジプト王に立ち向かい、無事に民族を連れてエジプトを脱出することに成功します。

これを「ユダヤ民族の出エジプト」と呼んでいます。

また、このエジプトからイスラエルへ戻る途中で、モーセは有名な「十戒」を授かります。

十戒は石に刻まれていたので「契約の箱」に入れられ、これを守りながら、民族はイスラエルを目指して約40年間さまよいました。

イスラエル王国の誕生と平安の都エルサレムの制定

モーセの死後ようやくイスラエルの地に戻ってきた12部族は、初め散り散りに暮らしていました。

しかしサウルという人物を中心に一つの国家「イスラエル」として統一します。

そしてサウルのあと、イスラエルを継いだのがダビデ王。

ダビデ王は首都をエルサレムと名付け、その息子ソロモンが、エルサレムの地に契約の箱を納めたイェホバの神殿を建てました。

イスラエル王国の分裂と民族の離散

しかし、ソロモン王が亡くなると、再びイスラエル王国は民族ごとに分裂してしまいます。

そして戦いの果てに、12部族のうち10部族が移住しどこかへ姿を消してしまいました。

残った2部族も他民族に襲われ、イスラエル王国は姿を消してしまいます。

その後、二度にわたり、離散したイスラエル民族のうちユダ族が、この地に戻って国を作ります。

(ユダ族だったので、ユダヤ国と呼んでいて、この時からイスラエル民族をユダヤ民族と呼ぶようになる)

しかしそれも、バビロン帝国やローマ帝国に滅ぼされてしまうのです。

そうして放浪したユダヤ人たちが再びイスラエルの地に国を作ったのは、それから二千年ほど後のこと。

1948年になってからのことでした。

アブラハムから派生した3つの宗教

さて、上記の教典「タナフ」のストーリーを聞き、キリスト教の聖書の教えに似ているように感じませんでしたか?

実はユダヤ人の歴史を伝えている教典「タナフ」を元に作られたのがキリスト教の旧約聖書だと言われています。

ユダヤ教を母体にして、キリスト教の教えが生まれたのです。

また、タナフと旧約聖書をもとに書かれたのがイスラム教の教典「コーラン」。

コーランでは、モーセもイエス・キリストも預言者の一人として登場するそうです。

つまり、アブラハムをルーツにして、ユダヤ教と、キリスト教とイスラム教が生まれたのです。

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