天地開闢の際に存在した三柱の神のうち、宇宙の根源の神であるとされる「天御中主大神霊(アメノミナカヌシ)」

このアメノミナカヌシは、もともとは別の神であった「豊受大神(トヨウケ)」と同一神として祭られていることがあります。

なぜこの二柱の神は同一視されるようになったのでしょうか?

その背景には、神社の政治的な意図のみならず、南北朝動乱の苦しい時代があったのです。

「トヨウケ」がアメノミナカヌシに結びつけられたのは「格上げ」のため?

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「豊受大神(トヨウケノオオカミ)」は皇祖神「天照大神(アマテラス)」の食事担当の神として、伊勢神宮・外宮に祭られている神です。

もともとは丹後の国の土着の神であったようです。

このトヨウケが祭られている外宮は、内宮と同じ「伊勢神宮」という名前がついていますが「神社の格」は同等に捉えられてはいません。

内宮が祭っているのは皇祖神アマテラスオオミカミ。

一方で外宮はそのアマテラスの食事を用意する神・トヨウケ。

どうしても、下宮は内宮よりも格下の神社として扱われてしまうのです。

それについて不満を持ったのが、外宮の神官でした。

神社の財源である土地は御厨(みくりや)・御薗(みその)と呼ばれており、格が高ければ高いほど土地を集めることが出来ました。

そこで外宮の格をあげるために考えられたのが

「トヨウケとアメノミナカヌシをくっつける」

こと。

こうして鎌倉時代中期ごろから、トヨウケノオオカミに「箔をつける」ための政治活動が行われるようになったのです。

その中でトヨウケは「天照止由気皇太神(あまてらすとゆけのすめおおかみ)」と呼ばれたり、外宮は「豊受皇太神宮」と呼ばれたりしました。

南北朝動乱で「最強の救済神」となったトヨウケ×アメノミナカヌシ

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このように最初は神社の政治的な意図で始まった「トヨウケとアメノミナカヌシを同一神とする」政策。

これが、南北朝の動乱という不安定な時代に、人々への救済へとつながっていきます。

というのも、トヨウケと習合したアメノミナカヌシは、宇宙の根源であるばかりでなく「人々を飢餓からも救う」という御利益を身に着けたから。

またトヨウケもアメノミナカヌシも一緒になることで、当時の人々が最も求める救いを与えられる神になったのです。