「産女(うぶめ)」とは、妊婦のまま亡くなった女性が、子供を産めなかった無念から妖怪になった姿です。
「姑獲鳥」とも言います。
でもこの産女という妖怪。
人間の穢れを全て負わされて誕生した、悲しい妖怪なのです。
全国各地に存在する「産女(うぶめ)」の伝承
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「妊婦のまま亡くなった女性が妖怪になる」という伝承は古くから存在し、その姿は「産女」「姑獲鳥」と呼ばれてきました。
全国各地にさまざまなバリエーションを持って存在しますが、多くの話しに共通しているのは
妊婦のまま亡くなったが墓の中で子供を産んで墓から這い出る
子供の世話をしてくれる人を探す
しばしば鳥の姿をしている
ということです。
人々は亡くなった妊婦が産女になることを恐れて、妊婦が亡くなった場合には腹から胎児を摘出し、抱かせて埋葬したといいます。
「産女」は穢れを背負わされたスケープゴート
「産女」という妖怪は、亡くなった妊婦の無念さを代弁するために誕生したのでしょうか。
私はそうではなく、産女という妖怪はある種の「スケープゴート」だったように感じられます。
平安時代以降に広まった、「穢れ」という概念。
「穢れ」はさまざまな災厄の元凶であると考えられました。
災厄を解決するために穢れを祓う必要が生じますが、そのためには穢れを背負った何者かがいなければいけません。
そこで格好の対象となったのが「亡くなった妊婦」です。
仏教では、そもそも女性は穢れた存在。
その上に、亡くなった妊婦には「死穢」「産穢」「血穢」という三つの不浄がセットになっています。
穢れた存在として忌み嫌うのに、亡くなった妊婦は格好のえじきだったのです。
女は「妊娠したら穢れ」。だけど「産まなければ役立たず」
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さて、平安時代ごろから、そもそも女性は
亡くならずとも「妊娠している」というだけで穢れた存在
だと考えられるようになりました。
そのため居場所も調理の火も分けられ、陣痛がはじまると道の辻にある「産小屋」に閉じ込められたとも言います。
「道の辻」とは中世では化け物が現れたり異界と通じると考えられた場所で、出産もまた同じように異界とつながる出来事として捉えられていたのかもしれません。
こうして妊娠・出産するとなると穢れ扱いされた女性ですが、「産まない」ということもまた罪なこと。
妊娠できない女性は「石女(うまずめ)」と呼ばれ蔑まれました。
産んでも忌み嫌われ、産まなくても蔑まれる。
妊婦のまま亡くなったら、恐れられる。
女性がどのように生きても(亡くなっても)、理不尽な扱いをされた時代は長かったのです。
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